女性を美しくする生薬のいろいろ|漢方のはなし
2.当帰(とうき)
「女性の宝、美容の女王」といわれる当帰(とうき)。すべての「血症(けっしょう)」に重要な生薬(しょうやく)
当帰(とうき)は女性の健康と美容にはなくてはならない生薬(しょうやく)と言われています。セリ科の植物の根で、強い芳香があり、味は甘く、辛く、からだを温める「温(おん)」の性質を持っています。中国の女性は昔から当帰(とうき)を「美容の秘薬」としてよく使ってきました。現在でも中国南方の女性は当帰(とうき)のドライシロップを飲む習慣があります。
女性の一生は「血(けつ)」とは切っても切れない関係にあります。
中医学でいう、「血(けつ)」は人の生命活動を維持する基本の物質で、顔色が良く艶やかで、皮膚がふくよかで潤っていて、毛髪に光沢があるのも、目などの感覚器や筋肉や骨が円滑に動くのも、すべて血(けつ)が十分にあって初めてできることなのです。こころ、思考、気分などの精神活動を支えている物質的な基礎も「血(けつ)」なのです。
女性は毎月の月経で一定量の血がなくなり、しかも妊娠、出産、授乳には充分な血が必要です。だから、女性は常に血を養うように気をつけることが大切で、血の不足、血の汚れ、ドロドロした血は女性を悩ますトラブルのもとになります。当帰(とうき)は足りない血を養い、月経不順、無月経、貧血などを改善します。当帰(とうき)は良い補血薬として、「血虚(けっきょ)」(血の不足などの状態)によるいろいろな症状に効きます。また、血の汚れをきれいにし、ドロドロの血をサラサラにし、血の流れを改善して、生理痛、無月経、月経不順、シミ、目の下のクマを解消します。当帰(とうき)は血を調節し、多くの「血症(けっしょう)(血の異常)」を治し、血の病気にとっては非常に重要な薬なのです。
当帰(とうき)には、子宮を興奮させる成分が含まれています。子宮の機能を調整し、子宮平滑筋に対して興奮と抑制の療法の作用を持っています。子宮の中に圧力が加わったときには興奮作用を与え、不規則な収縮を規則正しくし、収縮する力を強めます。逆に、子宮の中に圧力がかかっていないときには、収縮をおさえる作用があります。また、ビタミンEの欠乏症を予防します。
「皮膚は内臓の鏡」といわれます。血液はお肌に栄養物や酸素などを送って潤しています。血液が不足したり、血液の流れが悪くなれば肌が荒れてきます。当帰(とうき)には大量の精油、ビタミンB12、ビタミンA、ショ糖、ミネラルなどの成分が含まれ、血液に栄養を与え(養血(ようけつ))、血液の流れをスムーズにします(活血(かっけつ))。その結果、お顔もきれいになり、お肌もピカピカになり、潤いを持った光り輝くきめ細かな皮膚になります。
当帰(とうき)の「養血(ようけつ)」と「活血(かっけつ)」の作用で、大腸を潤し、すべりやすくし、便秘を自然に解消することができます。しかも当帰(とうき)は下腹部の血液の流れを改善し、粘膜を潤し、豊かなセックスライフを可能にしてくれます。また、赤痢菌、チフス菌、大腸菌などが増えるのを抑える働きがあり、腸炎や下痢のときにも用いられています。
お産の後の頑固な腹痛にも、当帰(とうき)はよく効きます。しかも、血液の流れを良くし、血液の成分を調節し、女性ホルモンのバランスを整えますので、女性特有の「血の道」症を改善します。母親になって若返ったという人の秘訣はこの当帰(とうき)にあるのです。
また、肝臓に栄養を与え、その働きを保護し、強め、代謝を活発にさせますし、老化や「生活習慣病」の「元凶」ともいわれている活性酸素を取り除き、からだの調子をととのえてくれます。
女性の健康、美顔、美容にとって当帰(とうき)は非常に重要で、欠かせない生薬(しょうやく)なのです。婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、当帰飲子(とうきいんし)はすべて当帰(とうき)を中心とした有名な中国漢方薬です。当帰(とうき)はほんとうに「女性の宝、美容の女王」といっても言いすぎではありません。
特徴と効能
●「補血」の働きがあり、血液の流れを改善。だかお肌ピカピカ
●子宮機能調整。ビタミンE欠乏症を予防
●女性ホルモンのバランスを整える
●下腹部の血液の流れを改善
●活性酸素を取りのぞく