女性を美しくする生薬のいろいろ|漢方のはなし

5.地黄(じおう)

お肌の衰え、「腎(じん)」の衰えによく効きます。「腎」が女性ホルモンの分泌をコントロール

昔から「色白は七難を隠す」という言葉があります。色白かどうかは今の若い女性はそれほど気にしていないかもしれませんが、お顔のくすみ、シミ、ソバカス、老人性の斑点など、やっぱり「イヤだわ」と嫌われています。これらを隠そうと、厚化粧をして粗悪な化粧品のために顔面黒皮症になることさえあります。過労、夜ふかし、慢性の肝(かん)・腎(じん)疾患の人達はくすんだ色の顔になりやすいものです。これは副腎皮質機能の低下とも関係があります。

中国漢方からいえば、これは「腎虚(じんきょ)(腎の働きが衰えたもの、精力不足)」「精血(せいけつ)の不足」が原因です。地黄(じおう)を中心とした漢方薬を飲み続ければ、「腎(じん)」の働きが活発化し、「精血(せいけつ)」が溢れ、顔のくすみがなくなり、特に顔面、首の周りにできたシミ、ソバカス、老人性の斑点が徐々になくなっていきます。明代皇室の「駐顔保美秘方益寿永貞膏」は地黄(じおう)を中心としたもので、永楽帝以降、代々の皇妃が愛用していました。

地黄はゴマノハグサ科の植物ジオウの根茎で、「腎(じん)」を補う大切な漢方薬です。

中国漢方では「腎」は人体の成長、発育、生殖の根本で、女性では「腎気(じんき)」が盛んになる時期、腎のなかにある「陰精(いんせい)」を絶えず充実させ、女性ホルモン様の働きでからだを成熟させ、月経を起こさせます。「腎(じん)」には脳下垂体、副腎の働きも含まれています。脳下垂体の機能低下による月経困難と無月経、子宮の発育不全による不妊症や、乳房が大きくならなかったり、女性らしい曲線美が出てこないといった症状などにも地黄(じおう)が優れた効果を発揮します。

地黄は熟地黄(じゅくじおう)と生地黄(しょうじおう)に分けられます。

熟地黄(じゅくじおう)は根茎を蒸して天日で乾燥したもので、滋養・強壮の力が強く、腎虚(じんきょ)による妊娠中の胎児の異常な動き、習慣性流産によく使われています。レーマニン、マンニトール、ビタミンA類物質などを含み、美容、血糖降下、喘息、便秘などによい効果があるようです。

生地黄(しょうじおう)は新鮮な根茎で、血の中の熱をしずめ、水分代謝をたすける働きがあります。女性ののぼせ、手のひらや足の裏のほてり、更年期障害による頭がボーとする感じ、耳鳴り、腰膝部のだるさなど、腎虚(じんきょ)の症状に用いられます。血の中の熱によっておこる不正性器出血、吐血、鼻血、尿の血、皮下の出血、咳による出血、便血などの出血にも効果があり、のどの腫れと痛み、口の渇き、便秘を改善します。アトピー性皮膚炎による皮膚の赤味、紅皮症にも優れた効果があります。

40代、50代になると、今更もう遅いとか手遅れだとか言われ、気恥ずかしさも加わってか、美しくなることを諦めてしまう人が結構いますが、決してそうではありません。美しく、健康でしかも長生きであることは、人生の究極の願いではないでしょうか。人間の生きる理想ではないでしょうか。ふっと一息つき、自分の顔を鏡で見てみると、ちょっとシワやシミや斑点が出て、肌もカサカサ、白髪も出始めているかもしれません。しかし、これは「腎虚(じんきょ)」、「精血(せいけつ)の不足」が原因で、地黄(じおう)など「補腎(ほじん)」・「精血(せいけつ)を養う」漢方薬を飲めば改善できるのです。人生90年という今日の高齢社会を自分自身のために、颯爽(さっそう)と生きていきましょう。

特徴と効能
●腎の働きが活発化し精血が溢れ、顔のくすみなどが消え、美しい素肌に
●滋養・強壮の力が強く、腎虚による流産や胎児の異常な動きに効果
●血液のなあの熱をしずめ、水分代謝たすける
●血糖降下・喘息・止血などにも効果

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