ガンと免疫|漢方のはなし

9.免疫力を高める中国漢方の知恵

免疫力を高めるための知恵は中国漢方には数多くあります。その考え方のおもなポイントは次のようなものです。

(1)腎を強めて骨髄の造血能力と免疫細胞の数を増やす
免疫細胞を含め、血液の中を流れている赤血球、白血球、血小板という血球は骨髄から作られています。「腎は髄を生ずる」という漢方の考え方があり、腎を強める薬で免疫細胞を増やすことができるのです。 補腎薬という「腎を補う」薬にはこのような作用がることは動物実験でも証明されています。特に参茸補血丸、八仙丸、金匱腎気丸などが有名で、抗ガン剤の投与による血球や骨髄細胞の減少という副作用を改善する効果も認められています。

(2) 脾胃(胃や腸など消化器系)の機能を改善し、気、血を補うことを。健脾益気(けんぴえっき)といいます。十分な栄養を確保し、免疫細胞の活力を高めます。

(3)ストレスを回避し、気をスムーズに巡らせる
精神的なストレス、運動不足は気の滞り(気滞)を招き、体内で「交通渋滞」が発生し、自律神経失調と免疫機能の低下を引き起こします。気の滞りを解消し、気をスムーズに巡らせること(疏肝理気そかんりき)によって免疫力の低下を防ぐことができるのです。

(4)血液を補う
 血虚(血液不足)という状態が続くと、体力が衰え、免疫力も当然低下し、ガンが発生しやすい体になります。それを改善するために活用されるのが補血(血液を補う)作用のある薬です。

(5)血液をサラサラに
サラサラした血液と良好な血液循環が正常な免疫機能の維持には必要な条件です。お血(血液がドロドロになったり、滞ったりする)になると、免疫細胞の機能が低下します。 血液の過酸化(悪玉コレステロールの生成、老廃物の血管壁への沈着など)の予防と治療にも?血の改善(活血化?かっけつかお)がなによりも大事です。

(6)水分の代謝を促進し、痰湿を取り除く
水分の代謝が悪いと、痰湿といって、水分や老廃物などが体内にたまってしまい、腫れ、むくみなどの症状が現れます。このような「体内の老廃物」は、免疫系の機能を邪魔しますので、取り除かなければなりません。この痰湿を取り除くことを?痰化湿(きょたんかしつ)と言います。

(7)清熱解毒薬の活用
ガンの原因となる有害物質を漢方では「毒」と言います。また、ガン細胞などは常に毒を出して体をむしばむのです。その毒を体から排除するために、清熱解毒清熱解毒(熱や毒素を取る作用)の薬を使います。

以上のようなポイントにあわせて漢方薬を活用します。1つの薬で総てOKというわけではありません。症状が変われば、使用する薬も変わってきます。 また1つの薬だけでなく、いくつかの薬を組み合わせて、免疫機能を高めるように工夫をしています。

漢方のはなし