ストレスにやさしい生薬のいろいろ|漢方のはなし

9.理気作用のある生薬 陳皮(ちんぴ)・枳穀(きこく)

胃腸の働きをスムーズにする陳皮(ちんぴ)・枳穀(きこく)

ストレスの影響を最も受けやすいのは何と言っても胃腸で、胃腸機能を調整する生薬(しょうやく) としては陳皮(ちんぴ)や枳穀(きこく)がよく使用されます。これらはともにミカンの仲間です。ミカンの皮は七味唐辛子の中にも入っていて、日本でも古くから胃腸薬として利用されています。最近流行しているアロマテラピーでも、柑橘類はストレスを取り除き気分を落ち着かせる働きがあるとされ、広く利用されています。

陳皮(ちんぴ)は温州ミカンの皮で、「陳(ちん)」には古いという意味があります。褐色になるまで寝かせた陳皮(ちんぴ)は、香りもよく、治療効果が優れていることからこう名付けられました。

陳皮(ちんぴ)の主な働きは「理気健碑(りきけんぴ)」で、ストレスのため胃腸の気(き)の流れが悪くなり、これによって生じた、食欲不振・腹部の膨満感・むかつき・嘔吐・下痢などの症状を治療します。陳皮(ちんぴ)には補気(ほき)の働きはないが、胃腸の働きを活発にして、栄養分の吸収を高めることができることから、エネルギーを補う党参(とうじん)や白朮(びゃくじゅつ)などの補気薬(ほきやく)と併用することがよくあります。

この他、水分代謝を促進する働きもあることから、カゼで痰がつまり胸苦しいなどの症状があるときにも応用することができます。

枳穀(きこく)はダイダイ・タチバナなどの実で、未成熟のうちに採集したものを枳実(きじつ)、成熟させたものを枳穀(きこく)といいます。陳皮(ちんぴ)に似た働きがありますが、その効果は陳皮(ちんぴ)よりも強く、腹が張って痛む・腸の動きが悪く下痢あるいは便秘する・スッキリ排便できずに残便感がある・ゲップやガスが多いなどの症状がある場合に使用します。しかし作用が強いので虚弱体質の方は長期間・多量に使用してはいけません。

この他、産後の子宮脱・慢性の下痢に伴う脱肛・胃下垂などの内臓下垂などにも、多量の補気薬(ほきやく)に少量加えることにより、気(き)の流れを促進させて、治療効果を高めることができます。

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