ストレスにやさしい生薬のいろいろ|漢方のはなし

11.潜陽作用のある生薬 竜骨(りゅうこつ)・牡蠣(ぼれい)

のぼせた気を降ろす竜骨(りゅうこつ)・牡蠣(ぼれい)

激しいストレスや、ストレスが長期間加わり気が一カ所に鬱積すると熱が生まれます。熱はやがては上に向かって燃え上がり、のぼせ・顔や目が赤い・動悸・息苦しい・イライラ指摘持ちが落ち着かない・不眠・頭痛などの症状が起きます。現代医学では高血圧傾向にある方にこのような症状がよく現れます。中医学では「肝陽上亢(かんようじょうこう)」あるいは「肝火上炎(かんかじょうえん)」などと言います。このような状態では、やがては脳に影響して脳溢血やクモ膜下出血などを引き起こす可能性が強くなるので早めに対処する必要があります。

燃え上がった火を鎮静させて高ぶった気持ちを鎮めることを「平肝潜陽(へいかんせんよう)」あるいは「重鎮安神(じゅうちんあんじん)」と言い、治療には重量があり下に沈む性質のある竜骨(りゅうこつ)・牡蠣(ぼれい)などが使われます。

竜骨(りゅうこつ)は古代の哺乳類の化石で、古くは不老不死の薬として皇帝にも献上されたこともあり、有名な甲骨文字は竜骨(りゅうこつ)に刻まれたものから偶然発見されたものです。普段からのぼせやすく、めまい・頭痛がよく起き、興奮して眠れないことが多いなどの症状を伴う場合によく使われます。

牡蠣(ぼれい)は『海のミルク』とも呼ばれるくらい栄養豊富なカキの殻で、漢方薬としては身よりも殻の方がよく使用されます。

カルシウムが不足するとイライラしやすくなるということはよく知られていますが、牡蠣(ぼれい)にはカルシウムが豊富で現代医学的にもその効果は確認されています。

肝陽上亢(かにょうじょうこう)ではめまい・頭痛だけでなく緊張のため手が震えたり、体がこわばってしまい思うように動けなくなることがあります。このような状態はまるで体の中を風(ふう)が吹き、活動の自由が奪われたようなので「肝風内動(かんぷうないどう)」と呼びます。牡蠣(ぼれい)には高ぶった気(き)を鎮めるだけでなく、熱によって消耗した潤いを補い、肝の機能を調節して震えを軽減する働きがあるので、このような症状がある場合もよく使います。

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