ストレスにやさしい生薬のいろいろ|漢方のはなし

15.精神活動を安定させる生薬

不眠症を解消する酸棗仁(さんそうにん)

酸棗仁(さんそうにん)はクロウメモドキ科サネブトナツメの種子で精神活動を安定させる働きがあり、主に不眠症の治療に使われています。

不眠にもイロイロナタイプがありますが、心身が疲れて寝つきが悪く、眠れたとしてもすぐに目を覚ましてしまったり、眠りが浅く夢を見るようなタイプの不眠に適しています。このほか潤いを補う・発汗を抑えるなどの働きもあるので、動悸・不安・寝汗をかく・便が乾燥して便秘になりやすいという場合にも使用する ことができます。

精神を安定させる遠志(おんじ)

一部の植物の名前は、その薬効に由来するものがありますが、遠志(おんじ)も効能効果がそのまま植物の名前になったと言われています。

ヒメハギ科の植物の遠志(おんじ)には驚きやすい・動悸・不眠それに意識混迷などの状況を改善し『遠く(久しく)志を持ちつづける事ができる』という精神安定作用があり、中国の医学書「本経」には「不足を補い、邪気を除き・・・知惠を増し、忘れず、志を強め、力を倍増する」とあります。

病を以て病を治療する牛黄(ごおう)

牛黄(ごおう)製剤は非常に高価ですが、それもそのはずで牛が偶然病気になり、できた胆石を乾燥させたもので、どの牛からも取れるわけではではなく非常に貴重な動物性生薬(しょうやく)だからです。

中医学では、精神が体の外の情報を受け取り、その情報が竅(あな)を通って心(こころ)や脳に伝えることにより我々の意識がはっきりし、的確な反応をすることができるとしています。これを心竅(しんきょう)・清竅(せいきょう)などと呼んでいますが、熱病や脳卒中などでこの竅(あな)が塞がってしまうと情報は伝わらず、健忘・痴呆・ひとの話や周りの状況が判断できない・意識不明・昏睡などの精神・意識障害や、言葉が話せない・手足が自由に動かない・震えるなどの運動障害が現れます。

牛黄(ごおう)にはこの竅(あな)を開く「開竅(かいきょう)」作用があり、意識や情報それにエネルギーをスムーズに伝わりやすくする働きがあり、このような症状を改善します。

漢方のはなし