男性を強くする生薬のいろいろ|漢方のはなし
11.蛤かい(ごうかい)
オオヤモリが老人性の咳に効く。腎だけでなく、肺も強めるから
中医学では老化に一番関連している臓器が腎(じん)であると考えています。もちろん腎(じん)だけでなく心(しん)、肺(はい)、脾(ひ)、肝(かん)、そして腎(じん)という「五臓(ごぞう)」の陰陽(いんよう)のバランスを保つことを非常に重要視しています。 心(しん)は心臓・循環器系と心・精神活動に、肺(はい)は呼吸器系と皮膚に、脾(ひ)は胃だけでなく、小腸・大腸を含めた消化器系に、肝(かん)は「気(き)」というエネルギー活動を調節し、気分に関係し、さらに血液の貯蔵、量の調節と筋肉と目など、そして腎(じん)は水分調節だけでなく、成長、発育、生殖というホルモン系、脳、脊髄、骨などにも幅広く関連しています。年を取って髪の毛が抜けたり、歯が駄目になり、耳が遠くなるのは確かに腎(じん)の衰えですが、特に目がかすみ、筋肉が弱くなるのは肝(かん)の衰えが関係し、皮膚がかさつき、咳が出やすくなるのは肺(はい)の衰えが関係し、と老化は「五臓六腑(ごぞうろっぷ)」全体が衰えてくるからです。
中医学には「抗老防衰(こうろうぼうすい)」という考え方があります。それは補腎(ほじん)を中心に補肺(ほはい)、補肝(ほかん)、補脾(ひ)といった不足を補う方法で、食べ物と薬と運動などで、老化のスピードを少しでも緩めていこうというものです。「高齢社会」の今日、非常に重要な考え方ではないでしょうか。
人参や五味子(ごみし)などとともに
補腎(ほじん)とともに補肺(ほはい)としても働き、腎陽虚(じんようきょ)のインポテンツや性機能の衰えだけでなく、肺腎(はいじん)不足の慢性的な咳や喘息に効果を発揮するのが蛤カイ(ごうかい)です。蛤カイ(ごうかい)は体長20cm以上あるオオヤモリの内臓を取って乾燥させたもので、蛤はオスの、カイはメスの鳴き声といういわれがあり、一対になったものを用いています。双料参茸丸(そうりょうさんじんがん)に蛤カイ(ごうかい)は配合されています。蛤カイ(ごうかい)の強壮作用は鹿茸(ろくじょう)や海狗腎(かいくじん)よりは劣りますが、頑固な咳、喘息や呼吸困難症などに、人参(にんじん)、胡桃肉(ことうにく)(クルミの実)、百部(びゃくぶ)(ビャクブの根)、紫苑(キク科シオンの根)、五味子(ごみし)(チョウセンゴミンの実)などと共に用いています。