男性を強くする生薬のいろいろ|漢方のはなし

17.冬虫夏草

不思議な生薬、冬虫夏草 古来、不老不死の妙薬に

冬虫夏草(とうちゅうかそう)とは本当に不思議な名前ですが、文字通り冬は虫の姿で、夏になると草に変わると信じられていたからです。中国の西南部の四川、貴州、雲南、青海、チベットなどの高原地域に見られ、実際はコウモリガ科の昆虫の幼虫にバッカクキン科のフユムシナツクサタケが寄生し、菌糸を伸ばし、やがて細長いキノコのように子実体を出したものです。大きさは根のような幼虫が3~8cm、子実体が4~10cmで、小さな棍棒のような形をしています。

胚の水分が不足した「肺陰虚(はいいんきょ)」の慢性の咳、喀血などに、また腎陽虚(じんようきょ)のインポテンツ、勃起不全、病後の体力低下などによく使われます。また、性ホルモンの働きを高めるメラトニンが豊富に含まれていることがわかってきました。

かつては中国産のみを冬虫夏草(とうちゅうかそう)といっていましたが、最近は昆虫に寄生する菌の総称にもなっており、日本でも山に入るとセミ、カメ虫などに寄生したものを見つけられます。日本産冬虫夏草(とうちゅうかそう)も売られていますが、医薬品として使われているものは中国産です。

冬虫夏草(とうちゅうかそう)を成分とした有名な中成薬は双料参茸丸(そうりょうさんじょうがん)で、人参(にんじん)、鹿茸(ろくじょう)、黄耆(おうぎ)、茯苓(ぶくりょう)、当帰(とうき)、地黄(じおう)、山薬(さんやく)、蛤カイ(ごうかいなど14種類の生薬(しょうやく)とともに配合されています。虚弱体質の改善、特に中高年の喘息など呼吸器系疾患に効果があります。

スピードとスタミナの源

冬虫夏草(とうちゅうかそう)といえば、10年ほど前、次々と陸上の長距離で世界新記録を連発し、メダルを独占した馬コーチが率いる中国の「馬軍団」が想い出されます。一時は新しい「筋力増強剤」を使っているのでと疑われ、ドーピングテストをされたほどです。実はそのスピードとスタミナの源が冬虫夏草(とうちゅうかそう)やスッポンなどの補腎薬(ほじんやく)だったのです。激しい運動による急激な発熱を抑える働きを抑える働きを活用していたのです。

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